キツネの恩【仏教トーク】

ちしょう
ちしょう

本記事は「雑阿含経巻第47-1264」の内容をもとに作りました。

キツネの知恩報恩

弟子1
弟子1

あれ? 何か聞こえませんでしたか?

お釈迦さん
お釈迦さん

あれは狐の声だと思うのですが。他の者も聞こえますか?

弟子A
弟子A

私も確かに聞こえました。

お釈迦さん
お釈迦さん

少し苦しそうな声に聞こえますね。

弟子2
弟子2

師匠。道場の近くで、キツネが怪我をしています。

お釈迦さん
お釈迦さん

なるほど。そういうことですか。ケガのせいで鳴いていたのですね。誰か治療できるものはいないですかね?

弟子1
弟子1

私が呼んできます。

お釈迦さん
お釈迦さん

お願いします。私達も様子を見に行きましょう。


弟子2
弟子2

どうも怪我のせいで動けないようですね。

弟子1
弟子1

師匠、連れてきました。

シヴァカ
シヴァカ

私も獣の治療は専門ではないので、どこまでできるか分かりませんが……

お釈迦さん
お釈迦さん

お願いします。

シヴァカ
シヴァカ

とりあえず、傷口を食塩水で洗いましょうか。

お釈迦さん
お釈迦さん

ありがとうございます。きっとこのキツネも感謝していますよ。

弟子2
弟子2

師匠。キツネにそんな恩とか、感謝とかいう心はあるんですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

恩も知っているし、恩に報いる事も知っていますよ。

弟子2
弟子2

そういうものですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

案外、人の方が忘れてしまっている事が多いかもしれませんよ。

シヴァカ
シヴァカ

とりあえず、このまま様子を見ましょう。

弟子1
弟子1

早く元気になるといいですね。

ナレーション
ナレーション

その後、キツネは元気に野に帰っていきました。


弟子1
弟子1

キツネも元気になって野に帰って行きましたね。

お釈迦さん
お釈迦さん

そうですね。良かったです。

弟子2
弟子2

感謝の言葉はなかったですけどね(笑)

お釈迦さん
お釈迦さん

それは、キツネですからね。

しかし、恩に感じていたのではないですか?

弟子2
弟子2

どうでしょうか。

弟子1
弟子1

でも少なくともこの何日か、私達に、警戒はしてなかったように思います。

弟子2
弟子2

確かに、野生の動物が私達を警戒しないという事自体が、珍しいことだけど。

弟子1
弟子1

私は正直、あそこまで人間を警戒しないで接してくれるとは思わなかったです。

シヴァカ
シヴァカ

そういう意味では、治療される事が当然だと思っている人の方が、横柄な態度をとってくる事がありますね。

シヴァカ
シヴァカ

治療法や予防をお伝えしても、それを守らずに、また同じ怪我や病気を繰り返す人もいます。

弟子1
弟子1

でもキツネは次は怪我しないように、もっと慎重になるんじゃないですかね。

シヴァカ
シヴァカ

野生の動物ですから、おそらく今回の件から色々と学ぶでしょう。

弟子2
弟子2

師匠がいうように、案外、人の方が恩を知り、報いることを忘れている場合があるかもしれませんね。

お釈迦さん
お釈迦さん

ですから、私達僧侶は、よく学ばなければなりません。キツネのように、小さな恩を知り、報いることを忘れることがないように。

弟子2
弟子2

小さな恩ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

私達はただ傷口を洗っただけでしょう?

弟子2
弟子2

確かに。

お釈迦さん
お釈迦さん

それに私達はこうして仏道を歩んでいます。

この大恩を忘れる事ができるでしょうか?

弟子2
弟子2

しかと、肝に銘じておきます。

補足情報

出典

  • 雑阿含経巻第47-1264

(一二六四)如是我聞。一時佛住王舍城迦蘭陀竹園。爾時世尊夜後分時聞野狐鳴。是夜過已。於大衆前敷座而坐。告諸比丘。汝等於夜後分。聞野狐鳴不。比丘白佛。如是世尊。佛告比丘。彼野狐者疥瘡所困。是故鳴喚。若能有人。爲彼野狐治疥瘡者。野狐必當知恩報恩。而今有一愚癡之人。無有知恩報恩。是故諸比丘。當如是學。知恩報恩。其有小恩尚報終不忘失。況復大恩。佛説此經已。諸比丘聞佛所説。歡喜奉行
(大正No.99, 2巻346頁a段26行-b段6行)

SAT大正新脩大藏經テキストデータベースより

  • 国訳一切経阿含部3巻34頁

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