本記事は「雑阿含経巻第16-413」の内容を基に作りました。
そのような議論はやめなさい
コーサラ国のパセーナディ王、最近、すごい勢いだよね。
ああ、ひと昔前まで、ここらで最大の勢力を誇ったと言われるカーシー国を手中に収めたわけだからね。よっぼどの実力者じゃないの?
やっぱり、ここらじゃパセーナディ王が一番かな。
いやいや。ビンビサーラ王もすごいよ。あのマガダ国の。
ああ。ビンビサーラ王妃はコーサラ国の王族だっけ。ビンビサーラ王と結婚の際に、マガダ国はカーシー国の一部をその傘下に収めたとか……。
だからここらで一番は、ビンビサーラ王でしょう。
いや、でもパセーナディ王の方がすごいんじゃない?
マガダ国の経済力はすごいでしょう。
コーサラ国の軍事力もすごいって聞くよ。
軍備にもお金がかかるじゃない。だからやっぱりビンビサーラ王がここらへんで一番じゃないかな。
いいや。強さで言えば、パセーナディ王でしょ。
あなたたち。一体何の話をしているのですか?
お釈迦さん、いい所に。パセーナディ王とビンビサーラ王どちらが強いと思われますか?
お釈迦さんは、どちらの王にも会ったことがありましたよね?
なぜ、あなた達が、各王の勢力や財力について語っているのですか?
え? いや……。
そのような議論はよしなさい。
それは、仏法を理解する上で、何の利益にもなりません。
でも、王の行動如何によっては、様々な影響があるじゃないですか。
そうですよ。その影響によって、苦しみが生まれることだってあります。
「苦」についての話ってことじゃないですか。
方向性が違います。
「苦」についてというのであれば、以前にも言いましたが、四諦について考えなさい。
わかりましたね?
はい……
申し訳ございません。
お釈迦さんは退席しました。
いやいや。前にもこんな事あったよね
そうだね。前にも同じ事、聞いた気がするよ
前回は「命」で、今回は「苦」。
どっちも大事な話だと思うんだけど……。
「命」や「苦」の話をしちゃダメってことなのかな?
あ、いや。同じテーマはテーマでも「論点がずれている」ってことだと思うよ。
人間、誰にでも、そんなことありますよね。
私にもあるし。今も昔も。どこにでもある話。
そうだね。同じ「言葉」、例えば「命」について話しているつもりでも、何ていうか、話がかみ合っていないというか。論点が違うというか……。
「そういう話になってしまうの!?」ってことあるよね。
同じ言葉、例えば「苦」を念頭に話していても、全然違う中身の話をしているってことか?
そそ。同じ言葉を使っているからって、同じ話をしているとは限らない。同じ話をしているからって、中身が同じとは限らない。
ふむ。何にせよ、お釈迦さんが伝えたい事と私達が受け取ったことは違うってことか……。それはそれで凹むな。
まぁ、それはそうだけど、自分に才能がないとか、自分を否定的に考えるような方向で、考えないほうがいいよ。
そもそも、伝えたい事と伝えた事は違うのですから。
もしかして、「凹むな……」って話になるのも、論点が違うってことの一つなのか?
そうかもしれないね(笑)
補足
- 出典:雑阿含経巻第16-413
(四一三)如是我聞。一時佛住王舍城迦蘭陀竹園。時有衆多比丘。集於食堂。作如是論。波斯匿王。頻婆娑羅王。何者大力。何者大富。爾時世尊。於禪定中。以天耳聞諸比丘論説之聲。即從座起往詣食堂。敷坐具於衆前坐。問諸比丘。汝等何所論説。時諸比丘。即以上事。具白世尊。佛告比丘。汝等用説諸王大力大富爲。汝等比丘。莫作是論。所以者何。此非義饒益。非法饒益。非梵行饒益。非智非正覺。不向涅槃。汝等當説。此苦聖諦。苦集聖諦。苦滅聖諦。苦滅道跡聖諦。所以者何。此四聖諦。是義饒益。法饒益。梵行饒益。正智正覺。正向涅槃。是故比丘。於四聖諦。未無間等者。當勤方便起増上欲。學無間等。佛説此經已。諸比丘聞佛所説。歡喜奉行
(大正No.99, 2巻110頁a段3行-18行)
国訳一切経阿含部2巻31頁
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