指摘する際の心得、指摘される際の心得|舎利弗(サーリプッタ)と仏陀(お釈迦さん)の会話より

ちしょう
ちしょう

本記事は「雑阿含経巻第18-497」の内容を基に作りました。

指摘する際の心得、指摘される際の心得

サーリプッタ
サーリプッタ

人は過ちを犯します。それが故意であれ過失であれ……

弟子2
弟子2

そうですね。失敗や間違いは誰にでも起こり得ることですね。

弟子1
弟子1

私もよく𠮟られますw

わざとではないですが、やっぱり叱られるのは嫌ですよね。

弟子2
弟子2

でも、過ちを指摘してくれるのはありがたい事ですよ。

弟子1
弟子1

そりゃそうだけど、罪を並べ立てられるのは、それはそれで傷つくことがありますよ。

弟子2
弟子2

それは相手が叱るのではなく、怒っているからでは?

弟子1
弟子1

確かに一方的に怒っていることもあるけど、こちらが本当にミスした場合だってあるじゃない?

弟子2
弟子2

サーリプッタさんは指導する立場になることも多いと思います。人の過ちを指摘する時は、実際心の中はどうなっているんですか?

弟子1
弟子1

やっぱりイライラすることもあるんですか?

サーリプッタ
サーリプッタ

それは私が聞きたいくらいですよ。もちろん、心穏やかにいたいと思っていますが。

弟子1
弟子1

という事は、心穏やかでない時もあるという事ですか?

サーリプッタ
サーリプッタ

だって、あなたは過ちを指摘されるのは嫌なのでしょう?

弟子1
弟子1

どちらかというと、嫌ですね。

サーリプッタ
サーリプッタ

相手が嫌がる事だとわかっていながら、あえてそれをやらねばならない。その人の心が、何も考えず穏やかでいられると思えますか?

弟子1
弟子1

確かに……そうですね。

弟子2
弟子2

ほら、だからそれだけ自分の事を考えてくれる人の言葉は有難いんだよ。

弟子1
弟子1

そりゃあ、そうならいいけど、単に怒っているだけの人もいるよ……

 

サーリプッタ
サーリプッタ

お釈迦さんししょうはどうなのでしょう? 他の人の過ちを指摘する者は、どんな事に気をつけたら、心穏やかに指摘できるのでしょうか?

お釈迦さん
お釈迦さん

五つ、気をつけることがあります。

弟子2
弟子2

五つですか? 一つ目は何ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

一つ、「実」であることです。「不実」ではないことです。

弟子1
弟子1

「嘘は言わない。」「本当の事を言う」って事ですか?

弟子2
弟子2

偽りの心ではない。要は「誠意を持つ」って事じゃないの?

サーリプッタ
サーリプッタ

ふむ……。真実をねじまげるような事実内容の虚偽、意地悪みたいに誠意に欠ける対応はしないということでしょう。

弟子1
弟子1

二つ目は何ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

「時」にして「非時」ではない事です。

サーリプッタ
サーリプッタ

「適切な時に適切な場面で話す」ってことですね。

弟子1
弟子1

「TPOをわけまえる」って事か。

弟子2
弟子2

T(時)P(場所)O(場面)か。場所は言ってないけどねw

弟子1
弟子1

まぁ、似たようなもんでしょうw

弟子2
弟子2

三つ目は何ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

「義に益する事」「非義に益する事ではない事」です。

弟子1
弟子1

「義」とは「道理にかなう」ってことだよね。

弟子2
弟子2

「益」とは「ためになる」「役に立つ」って事だね。

サーリプッタ
サーリプッタ

「仏道の道理にかなう」「その理解に役に立つ事なら指摘する」ということですね。

弟子2
弟子2

四つ目は?

お釈迦さん
お釈迦さん

「柔軟である事」「無礼・下品ではない事」

弟子1
弟子1

下品ではない事、無礼だったり、無作法だったり、相手に失礼な態度で接しないという事か。

弟子2
弟子2

柔軟であるという事は、物事を柔軟に考えるってことか。

弟子1
弟子1

物腰が柔らかい。要は言動を柔らかくするという事では?

サーリプッタ
サーリプッタ

ふむ……。考え方や視点を柔軟にして、言動も柔らかい。そして相手を軽んじたり、見下したりしないってことでしょう。

弟子2
弟子2

五つ目は何ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

「慈心」にして「瞋恚」しないこと。

弟子1
弟子1

「瞋恚」は怒りって事だよね。怒らないってことか。

弟子2
弟子2

慈悲の「慈」は、他者に利益や安楽を与える事という意味だから……。そういう気持ちで接しましょうって事かな。

弟子1
弟子1

ちなみに慈悲の「悲」はどんな意味?

弟子2
弟子2

「悲」は他者の苦しみに同情し、これを抜く事だね。

サーリプッタ
サーリプッタ

ふむ……。自分の怒りをぶつけるのではなく、相手の為を思って指摘しなさいという事ですか。

お釈迦さん
お釈迦さん

この五つの法があれば、他の人の過ちを指摘することができると思います。

サーリプッタ
サーリプッタ

なるほど。では過ちを指摘される側は、どのような心持ちであれば穏やかにいられますか?

お釈迦さん
お釈迦さん

指摘される方も、同じようにこの五つの法を考えない。

弟子1
弟子1

そうか。さっきの五つの法がかなっていたら、その人は間違いなく自分の事を考えて言ってくれているのでしょう。

サーリプッタ
サーリプッタ

しかし残念ながら過ちを指摘する者の中には、さっきほ五法と全く反対の形で指摘をしている者も見かけます。

弟子1
弟子1

そうですね。例えばうそばかり言って、無罪の罪をきせようとする者もいます。

お釈迦さん
お釈迦さん

それは反省すべきでしょう。それこそ、そのように無罪の罪をきせようと嘘をつくような、誠意に欠ける態度は指摘して改めさせなければなりません。

弟子2
弟子2

でも無罪の罪をきせられそうになった方は、心穏やかではいられませんよ。

サーリプッタ
サーリプッタ

逆に無罪の罪を問われた方はどうしたらいいのでしょうか?

お釈迦さん
お釈迦さん

それもさきほどの五法の事をよく考えてください。無罪の罪を問われる。それはさきの五法にもとる行為、道理に背くものです。

弟子1
弟子1

変に責められて自信をなくしたり、萎縮したりする必要はないという事ですね。

サーリプッタ
サーリプッタ

ふむ。さきの五つの法が支えになってくれるという事ですか。

弟子2
弟子2

それどころか、さきの五法をそなえて過ちを指摘してくれる人は自分にとって役に立つ存在ですし、とてもありがたい存在です。

弟子1
弟子1

指摘する方もされる方も、互いにとって互いが大切な存在に変わるって事ですよね。

サーリプッタ
サーリプッタ

なるほど。でもそれだけ親密になったら、お互いの短所も欠点もより一層みえるようになりますよね。

お釈迦さん
お釈迦さん

親しくなればそうですね。

サーリプッタ
サーリプッタ

一緒に共同生活をしていればなおさらです。

サーリプッタ
サーリプッタ

その時お互いの短所や欠点を指摘される事が、事実その通りであっても、やっぱり指摘されることで素直になれず、ついついイラっとしてしまう事がありますよね?

弟子1
弟子1

ああ、わかる!わかる! 近しいからこそ、イラっとしやすくなることありますよね。

お釈迦さん
お釈迦さん

それは相手も怒りではなく、慈心(自分のためを思って言ってくれているのだ)と受けとめて、怒りに飲まれてはいけません。

サーリプッタ
サーリプッタ

さきの五法をしっかりとおもって過ちを指摘してくれる者がいても、それに対して怒る人もいます。そんな時はどうすればいいですか?

弟子1
弟子1

そういや不説過戒というのがありますよね。だから「人の過ちを説くな!」って逆に言ってくる人も……

弟子2
弟子2

不説過戒は「過ちを責めない」という意味だよ。

お釈迦さん
お釈迦さん

逆に皆さんに問います。あなた達は己の過ちを指摘されて怒るのですか?

弟子2
弟子2

いや、過ちを指摘してくれるのはやっぱり有難いことですよ。

弟子1
弟子1

その場では嫌に感じることもありますが、やっぱり自分の為に言ってくれている事が伝わると嬉しいですね。

サーリプッタ
サーリプッタ

お釈迦さんししょうを含め、供に仏道を歩むこころざしがある者から指摘されることは、逆にお願いしてでも頂きたい蜜の味のようなものです。

お釈迦さん
お釈迦さん

なんだ。私に問うまでもないではありませんかw

補足情報

  • 出典:雑阿含経巻第18-497

(四九七)如是我聞。一時佛住舍衞國祇樹給孤獨園。爾時尊者舍利弗詣佛所。稽首佛足退坐一面。白佛言。世尊。若擧罪比丘欲擧他罪者。令心安住。幾法得擧他罪。佛告舍利弗。若比丘令心安住。五法得擧他罪。云何爲五。實非不實。時不非時。義饒益非非義饒益。柔軟不麁澁。慈心不瞋恚。舍利弗。擧罪比丘具此五法得擧他罪。舍利弗白佛言。世尊。被擧比丘復以幾法自安其心。佛告舍利弗。被擧比丘當以五法。令安其心。念言。彼何處得。爲實莫令不實。令時莫令非時。令是義饒益。莫令非義饒益。柔軟莫令麁澁。慈心莫令瞋恚。舍利弗。被擧比丘當具此五法自安其心。舍利弗白佛言。世尊。我見擧他罪者。不實非實。非時非是時。非義饒益非爲義饒益。麁澁不柔軟。瞋恚非慈心。世尊。於不實擧他罪比丘當以幾法饒益令其改悔。佛告舍利弗。不實擧罪比丘當以五法饒益令其改悔。當語之言。長老。汝今擧罪。不實非是實當改悔。不時非是時。非義饒益非是義饒益。麁澁非柔軟。瞋恚非慈心。汝當改悔。舍利弗。不實擧他罪比丘當以此五法饒益令其改悔。亦令當來世比丘不爲不實擧他罪。舍利弗白佛言。世尊。<#0129_9/>被不實擧罪比丘復以幾法令不變悔。佛告舍利弗。彼不實擧罪比丘當以五法不自變悔。彼應作是念。彼比丘不實擧罪非是實。非時非是時。非義饒益非是義饒益。麁澁非柔軟。瞋恚非慈心。我眞是變悔。*被不實擧罪比丘當以此五法自安其心不自變悔。舍利弗白佛言。世尊。有比丘。擧罪實非不實。時不非時。義饒益不非義饒益。柔軟非麁澁。慈心非瞋恚。實擧罪比丘當以幾法饒益令不改變。佛告舍利弗。實擧罪比丘當以五法饒益令不變悔。當作是言。長老。汝實擧罪非不實。時不非時義饒益不非義。柔軟非麁澁。慈心非瞋恚。舍利弗。實擧罪比丘當以此五法義饒益令不變悔。亦令來世實擧罪比丘而不變悔。舍利弗白佛言世尊。*被實擧罪比丘當以幾法饒益令不變悔。佛告舍利弗。*被擧罪比丘當以五法饒益令不變悔。當作是言。彼比丘實擧罪非不實汝莫變悔。時不非時。義饒益不非義饒益。柔軟非麁澁慈心非瞋恚。汝莫變悔。舍利弗白佛言。世尊。我見*被實擧罪比丘有瞋恚者。世尊。*被實擧罪瞋恚比丘當以幾法令於瞋恨而自開覺。佛告舍利弗。*被實擧罪瞋恚比丘當以五法令自開覺。當語彼言。長老。彼比丘實擧汝罪非不實。汝莫瞋恨。乃至慈心非瞋恚。汝莫瞋恨。舍利弗*被實擧罪瞋恚比丘當以此五法令於恚恨而得開覺。舍利弗白佛言。世尊。有實不實擧我罪者。於彼二人我當自安其心。若彼實者。我當自知。若不實者。當自開解言。此則不實。我今自知。無此法也。世尊。我當如是。如世尊所説解材譬經説。教諸沙門。若有賊來。執汝以鋸解身。汝等於賊起惡念惡言者。自生障礙。是故比丘。若以鋸解汝身。汝當於彼勿起惡心變易及起惡言。自作障礙於彼人所。當生慈心。無怨無恨。於四方境界。慈心正受具足住應當學。是故世尊。我當如是。如世尊所説。解身之苦當自安忍。況復小苦小謗而不安忍。沙門利沙門欲。欲斷不善法。欲修善法。於此不善法。當斷善法當修精勤方便。善自防護。繋念思惟。不放逸行。應當學。舍利弗白佛言。世尊。我若擧他比丘罪。實非不實。時非不時。義饒益非非義饒益。柔軟非麁澁。慈心不瞋恚。然彼被擧比丘有懷瞋恚者。佛問舍利弗。何等像類比丘。聞擧其罪而生瞋恚。舍利弗白佛言。世尊。若彼比丘諂曲幻僞。欺誑不信。無慚無愧。懈怠失念。不定惡慧。慢緩違於遠離。不敬戒律。不顧沙門。不勤修學。不自省察。爲命出家。不求涅槃。如是等人聞我擧罪則生瞋恚。佛問舍利弗。何等像類比丘。聞汝擧罪而不瞋恨。舍利弗白佛言。世尊。若有比丘。不諂曲不幻僞。不欺誑。有信慚愧。精勤正念。正定智慧。不慢緩。不捨遠離。深敬戒律。顧沙門行。尊崇涅槃。爲法出家。不爲性命。如是比丘聞我擧罪。歡喜頂受。如飮甘露。譬如刹利婆羅門女。沐浴清淨。得好妙華。愛樂頂戴。以冠其首。如是比丘不諂曲。不幻僞。不欺誑。正信慚愧。精勤正念。正定智慧。不慢緩。心存遠離。深敬戒律。顧沙門行。勤修自省。爲法出家。志求涅槃。如是比丘聞我擧罪。歡喜頂受。如飮甘露。佛告舍利弗。若彼比丘諂曲幻僞。欺誑不信。無慚無愧。懈怠失念。不定惡慧。慢緩違於遠離。不敬戒律。不顧沙門行。不求涅槃。爲命出家。如是比丘不應教授與共言語。所以者何。此等比丘破梵行故。若彼比丘不諂曲。不幻僞不欺誑。信心慚愧。精勤正念。正定智慧。不慢緩。心存遠離。深敬戒律。顧沙門行。志崇涅槃。爲法出家。如是比丘應當教授。所以者何。如是比丘能修梵行。能自建立故。佛説此經已。尊者舍利弗聞佛所説。歡喜奉行
(大正No.99, 2巻129頁b段25行 – 130頁c段6行)

SAT大正新脩大藏經テキストデータベースより

  • 国訳一切経2巻91頁

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