黒い牛と白い牛|シッタラ(質多羅)長者

ちしょう
ちしょう

本記事は「雑阿含経巻第21-572」の内容を基に作りました。

黒い牛と白い牛

弟子2
弟子2

眼があるじゃない?

弟子1
弟子1

うん。

弟子2
弟子2

この眼で風景や景色、物、人など、色々な物をみているでしょう?

弟子1
弟子1

そだね。

弟子2
弟子2

この眼が色や形を受け取っているという事だよね。

つまり目が主体で、色々な物は客体って事でいいんだよね?

弟子1
弟子1

ん?

何が言いたいの?

弟子2
弟子2

何ていうかな。「自分の眼の中に、他の色や形が飛び込んできている」という認識でいいのだろうかと思って。

弟子1
弟子1

んー。それならこの世の中の風景や景色、物、人など、色や形が先にあったんじゃないかな?

弟子2
弟子2

なんで?

弟子1
弟子1

だって、生物が進化する過程で、色々な物を見る為に眼という感覚器官を生み出したんじゃないの?

弟子2
弟子2

ということは、私と反対の意見ってこと?

弟子1
弟子1

そだね。どちらかというと、色々な物の方が主体で、私達の目の方が客体っていたっらいいのかな。

 

君の言い方を借りると「他の色や形を見る為に、自分の眼が捉えている」と言ったらいいのかと思う。

弟子2
弟子2

私は眼が先で、色や形の方が後だと思う。

弟子1
弟子1

私は色や形が先で、眼の方が後だと思う。

シッタラ長者
シッタラ長者

何を話されているんですか?

弟子2
弟子2

これは、シッタラさん。今日はお食事をありがとうございます。

弟子1
弟子1

精舎(※1)の運営、いつもありがとうございます。

シッタラ長者
シッタラ長者

いえいえ、どういたしまして。

 

食堂で議論されているのが聞こえまして、こうして私にも聞かせてもらっていいですか?

弟子2
弟子2

眼が先で色や形の方が後なのか、色や形が先で眼の方が後なのか。

シッタラさんはどちらが主体でどちらが客体だと思いますか?

シッタラ長者
シッタラ長者

それは……「色や形の方が後なのか、色や形が先で眼の方が後なのか」ということは言えないのではないですかね。

どっちが主体でどっちが客体とも言えないと私は考えます。

シッタラ長者
シッタラ長者

例えば、ここに黒い牛と白い牛がいたとしましょう。

黒牛と白牛は互いに繋がれているとします。

弟子2
弟子2

ふむ。

シッタラ長者
シッタラ長者

この場合、黒い牛が白い牛を繋いでいるのですか?

それとも白い牛が黒い牛を繋いでいるのですか?

弟子1
弟子1

黒牛が白牛を繋いでいる……わけじゃないし。

白牛が黒牛を繋いでいる……わけでっもないですね。

弟子2
弟子2

んー。そもそも質問自体おかしくないですか?

弟子1
弟子1

あえていうなら縄で互いに繋がれているとしか言えないんじゃないですかね。

シッタラ長者
シッタラ長者

そうです。質問自体がおかしいですね。

お二人の議論もそれと同じ事ではないでしょうか。

弟子1
弟子1

なるほど。そういうことか。

弟子2
弟子2

確かにどっちがどっちだと結論が出ませんね。

弟子1
弟子1

似たような話に「鶏が先か、卵が先か」みたいな話もあったな……。

弟子2
弟子2

そういうことか。

シッタラさん、ありがとうございました。

シッタラ長者
シッタラ長者

いえいえ。こちらこそありがとうございます。

補足情報

  • 出典:雑阿含経巻第21-572

(五七二)如是我聞。一時佛住菴羅林中。與衆多上座比丘倶。爾時衆多上座比丘。集於食堂。作如是論議。諸尊。於意云何。謂眼繋色耶。色繋眼耶。如是耳聲鼻香舌味身觸意法。爲意繋法耶。法繋意耶。時質多羅長者。行有所營。便過精舍。見諸上座比丘集於食堂。即便前禮諸上座足。禮足已問言。尊者集於食堂論説何法。諸上座答言。長者我等今日集此食堂。作如此論。爲眼繋色耶。色繋眼耶。如是耳聲鼻香舌味身觸意法。爲意繋法耶。爲法繋意耶。長者問言。諸尊者於此義云何記説。諸上座言。於長者意云何。長者答諸上座言。如我意。謂非眼繋色非色繋眼。乃至非意繋法。非法繋意。然中間有欲貪者。隨彼繋也。譬如二牛。一黒一白。駕以軛鞅。有人問言。爲黒牛繋白牛。爲白牛繋黒牛。爲等問不。答言長者。非等問也。所以者何。非黒牛繋白牛。亦非白牛繋黒牛。然彼軛鞅。是其繋也。如是尊者。非眼繋色。非色繋眼乃至非意繋法。非法繋意。然其中間。欲貪是其繋也。時質多羅長者。聞諸上座所説。歡喜隨喜。作禮而去

(大正No.99, 2巻151頁c段29行 – 152頁a段22行)

SAT大正新脩大藏經テキストデータベースより

  • 国訳一切経阿含部2巻163頁

仏教用語

精舎しょうじゃ

出家修行者の滞在する寺院。簡単にいえば修行道場といえる。お釈迦さんの時代は、精舎はいくつもあり、祇園精舎や竹林精舎が有名。

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