
本記事は「雑阿含経巻第47-1246」の内容をもとに作りました。
職人の日常のように

師匠。自分に煩悩があるという事は理解しました。しかし、この煩悩と上手く付き合う事が、自分にはよくできません。

すぐにぱっと、どうにかできる、何か特別な方法はありませんか? テクニックとかあれば教えてください。
思い通りにいかなくて、なんか嫌です。

金属を加工する職人を知っていますか?

はい。確か錬金師と今はいうのですよね。

金属加工の職人が、どうやって、材料となる金や鉄などの金属を作るか知っていますか?

金の精錬ですか?

はい。金と言っても、最初から純粋な金ではないのですよ。まず、金が含まれた土砂を集め、槽に入れ、その中に水を注ぎます。そうしたら粗い不純物が、水と一緒に流れ出します。

へえ。詳しいですね。

それ、この前、町で作業している現場を見た時の話しですよね?

そうですね。粗い土砂が流し出せても、まだ細かい汚れというか、細かい砂が残っています。そこにまた水を注ぎ、その細かい汚れも流し出していきます。

そうやって金になるんですね?

それでもなお、微細にくっついている砂があり、それを水で流し出し、純金に近づけていきます。

なるほど。水を何度も注ぐことで、細かい不純物を取り除いていくのですか。

それだけではなく、炉の中に入れて、火で溶かし、もっと細かな汚れを除いていきます。

それで完成ですか?

まだまだ、その金は光沢もなければ、曲げてもポキっと折れてしまいます。

錬金師と呼ばれる金属加工職人達は、師弟でまだまだ作業を続けます。炉の中に入れ、火を焚き、軽く軟らかく光沢があり、曲げてもポキっと折れない、金へと仕上げていくのです。

そしてそこから、材料として、職人は様々な道具や装飾品を作っていくのです。各職人が想い想いの品物を制作していきます。

煩悩と向き合う時も、職人達の作業と同じように、コツコツやっていかなければならないってことですか?

職人の気概を参考にして、同じような気持ちで向き合わねばいけないってことですかね?

修行は特別なものではありません。
彼ら職人の日常のようなものですよ。
補足情報
出典
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- 雑阿含経巻第47-1246
(一二四六)如是我聞。一時佛住王舍城金師住處。爾時世尊告諸比丘。如鑄金者。積聚沙土置於槽中然後以水灌之麁上煩惱。剛石堅塊。隨水而去。猶有麁沙纒結。復以水灌。麁沙隨水流出。然後生金。猶爲細沙黒土之所纒結。復以水灌細沙黒土隨水流出。然後眞金純淨無雜。猶有似金微垢。然後金師置於爐中。増火鼓韛令其融液。垢穢悉除。然其生金猶故。不輕不軟光明不發。屈伸則斷。彼錬金師。錬金弟子。復置爐中。増火鼓韛轉側陶錬。然後生金輕軟光澤。屈伸不斷。隨意所作。釵鐺鐶釧諸莊嚴具。如是淨心進向比丘。麁煩惱纒。惡不善業。諸惡邪見。漸斷令滅。如彼生金淘去剛石堅塊。復次淨心進向比丘。除次麁垢欲覺恚覺害覺。如彼生金除麁沙礫。復次淨心進向比丘。次除細垢。謂親里覺。人衆覺。生天覺。思惟除滅。如彼生金除去塵垢細沙黒土。復次淨心進向比丘。有善法覺。思惟除滅。令心清淨。猶如生金除去金色相似之垢令其純淨。復次比丘。於諸三昧有行所持。猶如池水周匝岸持。爲法所持。不得寂靜勝妙。不得息樂盡諸有漏。如彼金師金師弟子陶錬生金除諸垢穢。不輕不軟不發光澤。屈伸斷絶。不得隨意成莊嚴具。復次比丘。得諸三昧不爲有行所持得寂靜勝妙。得息樂道。一心一意盡諸有漏。如錬金師錬金師弟子。*陶錬生金令其輕軟。不斷光澤屈伸隨意。復次比丘。離諸覺觀。乃至得第二第三第四禪。如是正受純一清淨。離諸煩惱柔軟眞實。不動於彼。彼入處欲求作證悉能得證。如彼金師*陶錬。生金極令輕軟。光澤不斷。任作何器。隨意所欲。如是比丘三昧正受。乃至於諸入處悉能得證。佛説此經已。時諸比丘聞佛所説。歡喜奉行
(大正No.99, 2巻341頁b段25行 – 342頁a段2行)
- 国訳一切経阿含部3巻19頁
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