【仏教トーク8】正しい事実の使い方

ちしょう
ちしょう

この会話は、「雑阿含経巻第2-35」の内容を参考にしました。

原文では、お釈迦さん、アヌルッダさん、ナンダさん、キンビラさんとの対話となっています。

ちしょう
ちしょう

まずは、アヌルッダさん、ナンダさん、キンビラさん達の「無常むじょう」に関する議論から始まります。

正しい事実の使い方

アヌルッダ
アヌルッダ

「無常」という教えがあるじゃないですか。

そのことについてなんですが……

ナンダ
ナンダ

「常なるものは無い」っていう教えだね。

キンビラ
キンビラ

この世の中のもの、ありとあらゆるものを観察しても、ずっと変わらずにあるものはない。これは紛れもない事実ですよね。

アヌルッダ
アヌルッダ

私も「変化している」という事実は、身の周りのもの、目に入るもの、色々なものから、学んでいます。

ナンダ
ナンダ

無常という教えは、「あらゆるものは変化している」という事実を示しているね。

弟子2
弟子2

なるほど。すべてものは変化している。その紛れもない真実を示してくれているのですね。

弟子1
弟子1

なら、「無常」ということは、真実そのものってことですよね?

弟子2
弟子2

そうだね。だから「無常」という教えは、どんなに時代が変わろうとも、場所や国が変わろうとも、絶対に正しい、真実の教えってことになるんじゃないかな。

弟子1
弟子1

まぁ、確かに、「あらゆるものは変化している」という教えは、どんな時代であろうが、どこであろうが、絶対にゆるがない真実と言えるね。

アヌルッダ
アヌルッダ

……

キンビラ
キンビラ

なんだか、そこまで行ってしまうと、「無常」という教えから少しずつ離れていくような気がするのですが……。

弟子1
弟子1

ぇえ!? そうですか?

弟子2
弟子2

だって、正しいじゃないですか。

ナンダ
ナンダ

いや……、でもね。

弟子2
弟子2

〇×△!@{fda}&%K+($%=~’%%#*>>*LO*+{O

アヌルッダ
アヌルッダ

O(’$”%(=△◆?*‘)’%)==~+*{‘P#$#”@

少し議論が白熱してきた所にお釈迦さんがやってきました。

 

お釈迦さん
お釈迦さん

皆さん、何やら白熱していますね。

弟子2
弟子2

お釈迦さん師匠、いい所に!

ナンダ
ナンダ

お釈迦さん師匠!申し訳ありません。

少し騒がしかったですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

いえいえ。大丈夫ですよ。

それより私も聞いていたのですが……

弟子1
弟子1

是非とも、お釈迦さん師匠の考えを聞かせてください。

お釈迦さん
お釈迦さん

では皆さん。「あらゆるものは常にある。変化しない」

これは絶対に正しい真実だとその答えにしがみついたら、それは「正しくある」と言えるでしょうか?

弟子1
弟子1

もちろん、答えは「NO」ですよ。

アヌルッダ
アヌルッダ

そうですね。私もそれは違うと思います。

弟子2
弟子2

「正しくある」とは言えません。

キンビラ
キンビラ

正しくないです。

ナンダ
ナンダ

違います。

お釈迦さん
お釈迦さん

ふむ。皆さん答えは「NO}ですね。

「正しくある」とは言えない。

お釈迦さん
お釈迦さん

ふむ……、よろしい。ではこれはどうですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

「あらゆるものは常ではない。変化している」

これは絶対に正しい真実だとその答えにしがみついたら、それは「正しくある」と言えるでしょうか?

 

弟子2
弟子2

私は「無常」は、正しい真実だと思います。だから「YES」です。

弟子1
弟子1

「あらゆるものは常ではない。変化している」ていうのは、正しいと思います。

弟子1
弟子1

ん? でも、あれ?

これ、さっきの質問とほとんど同じでは……。

でも「YES」だと思うんだけど……。あれ?

アヌルッダ
アヌルッダ

私は「NO」だと思います。

キンビラ
キンビラ

私も「正しくある」とは言えないと思います。

ナンダ
ナンダ

アヌルッダ、キンビラ、そして私の三人は、「それは何か違うのではないか」と思うのです。

アヌルッダ
アヌルッダ

そうなんです。確かに「あらゆるものは常ではない。変化している」ていうのは、正しい。だから「YES」と言いたい気持ちはわかるのですが、そういってしまうと、何かが違う気がするのです。

お釈迦さん
お釈迦さん

ふむふむ。よろしい。

そもそもあらゆるものは変化している。

時にその変化は私達人間にとって苦しいものです。

そうですよね?

アヌルッダ
アヌルッダ

そうですね。

例えばどれだけ大切な人がいたとしても、変化するからこそ、いつかその人との別れの時がくる。

キンビラ
キンビラ

人だけでなく、物も同じだね。大切な物、それも変化するからこそ、劣化する。いつか壊れてしまう。別れの時が来る。

ナンダ
ナンダ

死や壊、老いや劣化。これらは変化しているからこそ、起こることだよね。

弟子1
弟子1

でも、変化しているからこそ、大切な人との出会いや大切な物を作ることもできるんですよね?

アヌルッダ
アヌルッダ

そうだね。それも変化しているからこそ、起きることだよね。

お釈迦さん
お釈迦さん

そうやって「変化している」ということを知ったのなら、「絶対に変わらない、永遠不滅、これはずーぅっと私の物、私のそばにある」と、それにしがみつくことが可能だと考えますか?

弟子2
弟子2

いいえ。いくらしがみついても、その対象が、いつか無くなってしまうのだから、いつまでも、しがみつくことはできません。

ナンダ
ナンダ

しがみつく。それはつまり、離れられず、依存してしまうってことなんでしょうか……。

弟子1
弟子1

それは「執着しゅうちゃく」ってことですかね?

アヌルッダ
アヌルッダ

うーん。変化しているということは、そのしがみついているところも、いつか無くなるということですよね。それって苦しいですね。

キンビラ
キンビラ

そうですね。しがみつく所がなくなっても、そこにしがみつこうとしていたら、それは苦しいですね……。

ナンダ
ナンダ

いくら必死にしがみつこうとあがいていたら、結局それが無いんだからね……。

お釈迦さん
お釈迦さん

しがみつく所がないと知って、しがみつくことをやめたら、きっとそれは楽になるでしょう。

弟子2
弟子2

そうですね。

お釈迦さん
お釈迦さん

それが大事なのです。

アヌルッダ
アヌルッダ

なるほど。

無常を知ることによって、そのようにつながるのですね。

ナンダ
ナンダ

いつまでも、しがみつける所なんてないってことだもんね。

弟子1
弟子1

それにもかかわらず、無常という教えそのものにしがみついていたら、その行為自体が、無常という教えを無視している行動になってしまっているということですか?

アヌルッダ
アヌルッダ

ただ、その事実を知っているだけなのと、それを理解して、その事実に則した行動をしているのかは、違うってことですかね?

弟子2
弟子2

でもでも、私は「無常」という教えは、紛れもない真実だともうのです。

キンビラ
キンビラ

確かに、無常はゆるぎない事実だと思います。いつまでも変わらない真実といっても過言ではないかもしれません。

ナンダ
ナンダ

でも、そのいつまでも変わらない真実と言っている教えそのものが、「変化している」ということを説いているということも、忘れてはいけません。

弟子1
弟子1

変わらない真実が、「変わっていく」ことを説いている。

なんか矛盾しているようで、事実その通りなのが、おもしろいですね。

弟子2
弟子2

でも、私は「無常」という教えは正しいと思うし、間違いではないと思います。だから、大事にしたいと思うのです。

ナンダ
ナンダ

大事にすることと、執着することを混同してはいけませんよ。

弟子2
弟子2

えっ!? ぁあ、そうか・・・・・。

いくら正しくても、これは執着なのか……。

弟子1
弟子1

そういえば、大事にすることと執着することって、似ている気がするな。

キンビラ
キンビラ

そうですね。「大事にすること」と「執着すること」。どちらもやっていることに違いはないのかもしれません。

アヌルッダ
アヌルッダ

でも、やはり何か違いますよね。

キンビラ
キンビラ

ここにいる誰もが、無常という教えを受け入れている。正しいと思っている。それは何も変わらないのに、こうも違うのですから。

弟子2
弟子2

その教えですら、しがみつく対象にしてしまうのですね。私というやつは……。

アヌルッダ
アヌルッダ

そんなに落ち込まないでください。

ナンダ
ナンダ

そうですよ。今回の話を通じて、あなたに変化が生まれたのであればそれでいいじゃないですか。

キンビラ
キンビラ

それにそれは、あなたがしがみつかなかいからこそ、感じられる変化なのではないですか?

弟子1
弟子1

そうそう。それに、「そもそもしがみつく所が無い」という話もないしね。「しがみついた所もいずれ変化していく」っていう話だからね。

弟子2
弟子2

しがみつくことと、大事にすることが似ているって話?

弟子1
弟子1

それもそうだけど、大事にしようとしていた気持ちには変わりないのだから、その気持ちまで否定することもないってことかな。

ナンダ
ナンダ

しがみついていた所にしがみつくのはやめて、しがみついていた所を大事してくれるように変わったのなら、それでいいってことじゃないですか?

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