禅僧がおすすめするイギリスから日本に逆輸入された仏教書「フィーリングブッダ」

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お釈迦さんの教えが初めて他の人に伝わった時、どのような話をしたか、みなさんはご存知でしょうか?

その時に話した代表的な教えの中に四諦したい四聖諦ししょうたい)」という教えがあります。(仏教エピソード32話「最初の説法」にて少し触れています。また、伊丹禅教室の法話にてお話しております)

今回ご紹介する本は、その四諦の教えについて、懇切丁寧に書かれている本となります。

フィーリングブッダ

本との出会い

まず始めに、私が仏教を知り始めた頃、四諦という教えは、私にとって、ひどく納得がいかないものでした。

四諦に納得がいかなかった理由

四諦とは、以前紹介した、岩波仏教辞典にもこのように書かれています。

四諦

諦とは真理の意で、苦諦くたい集諦じったい滅諦めったい道諦どうたいというの4つの真理のこと。

そして、多くの仏教書の中で、簡単に四諦は以下のような説明されています。

  • 苦諦
    • 苦しみがある
  • 集諦
    • 苦しみの原因=煩悩
  • 滅諦
    • 煩悩が無くなり、苦しみが無くなる
  • 道諦
    • 滅諦へと至る筋道

要約すると「この世の中には、苦しみがあって、その原因は煩悩である。その煩悩が無くなれば、苦しみも無くなる。そしてその道筋が仏道である」ということです。

私にとってこの説明は、ひどく納得がいかなかったのです。

その理由は、以前書いた仏教エピソード第12話「第二の矢」でも触れています。

煩悩や三毒などと聞くと、いかにも悪の根元のように聞こえるので、仏教は、この欲望などの煩悩を無くすために修行していると考える人も多いかと思います。

そして、これら悪いものを完全に無くした姿が、仏や悟りと呼ぶのだろうと、誰もが単純に考えるでしょう。

中にはそこから、雑念を取り払い、心に一切の穢れのない、清らかで真っ白な姿を、仏の理想像として抱いている人がいるかもしれません。

ですが、その先に私が想像した仏の姿は、確かに雑念もなく、心に穢れのないものですが、まるでそれは、ロボットのように無感情で、人間味のない無機質な仏でした。

その理由は、煩悩の無い人間の姿が、私には全く想像できなかったからです。

ましてや、煩悩の全くないのが仏だとして、修行して、それを目指せと言われても、途方に暮れてしまいます。

どんなに考えても、欲望の無い、怒りのない、知らないことのない人間などありえない。私はずっとそう思い、長い間、仏教に共感を持てませんでした。

仏教エピソード第12話「第二の矢」

私は、煩悩を無くした人の姿に、決して好い印象を持っていませんでした。

そして何より「煩悩を無くせば、苦しみが無くなる」という、そんな単純な答えに納得がいきませんでした。

四諦の教えでいえば、どうしても、滅諦の所が心にひっかかっていたのです。

四諦の滅諦について調べた事

以前紹介した増谷文雄著作集。この本を読んでいても、やはり上記の多くの仏教書で見られる四諦の説明となんとなく齟齬を感じました。(私にとって増谷文雄さんの本で書かれている事の方が共感できました)

しかし、その齟齬が何なのかよくわかりませんでした。

唯一、糸口として見つかったのが、岩波仏教辞典。ここに「滅」という言葉には様々な意味があることを知りました。

一般的に「滅」は、消え失せる、つまり無くなるという意味で扱われています。

しかし、滅諦の<滅>は、語源を遡ると<nirodha>という言葉がその原語でした。

<nirodha>とは、翻訳すると、せき止める、囲む、制止するといった意味になります。

つまり、決して、煩悩は「無くなる」というわけではないことを示唆しています。

なんとなく、感じる齟齬。それを裏付ける言葉の意味。しかし、私は、この辺りの理解を、すぐに整理できたわけではありません。確信はありませんでした。

そんな中、藤田一照老師とお会いしました。一照さんとの出会いは、私にとって、このような曖昧な理解を、しっかりと理解に変えていってくれました。

その藤田一照さんが翻訳した本が、今回、ご紹介している、この本というわけです。

どんな本?

私にとって、四諦の教えについて、明確な理解を与えてくれたのがこの本です。

多くの日本の仏教書で説明されている、謂わば定型文とは異なりますが、しっかりと言葉の意味を考え、語源を辿り、それを基に、四諦について、懇切丁寧な説明がされています。

もちろん、先で述べた、滅諦の<滅>が<nirodha>という所にもしっかり触れています。

仏教用語をなるべく使わないよう最大限の努力もされているので、仏教知識がなくとも、読みやすいはずです。また、仏教用語を勉強している人にとっても、その理解に深みが増します。

私はこの本のおかげで、四諦の教えが学術的な文章や説明ではなく、イメージとして捉えやすくなったと感じています。

  • 苦諦
    • 苦しみはある
    • 追い風、向かい風もある
  • 集諦
    • 煩悩はある
    • 命の炎でもある
  • 滅諦
    • 囲い、または、せき止める堤防、壁
    • 「火=煩悩」は「風=苦しみ」によって、大きくなったり、小さくなったり、揺らぐ為、囲う。
    • ろうそくの炎のように、暖炉の火のように、囲うことで調節できる環境が調う。
  • 道諦
    • 調節の仕方、囲い方の実践

伊丹禅教室で「四諦」について法話をパワーポイントを用いて行っていますが、あのイメージ(画面)は、まさにこの本を読んだからこそです。

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