【如是我聞とは何ですか?】かのようにわたしはきいた

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以前、ご紹介した増谷文雄さんの本。主に、古い経典を現代語訳したものです。

「この本の中で少し気になったことがありました」と参禅者の方から質問を頂きました。

Q1「(紹介した増谷文雄さんの)本を読んでいると『かのようにわたしはきいた』という言葉が頻繁にでてくるのは何故でしょうか?」

Q2「またそのわたし・・・とは誰のことなのでしょうか?」

A「如是我聞にょぜがもんですね。お経の成り立ちを知ることで、これらの疑問は解けるでしょう」

如是我聞って何?

如是我聞とは、「このように(増谷文雄さんの訳では「かのように」と記されている)わたしはきいた」という意味です。

基本的に、経典(お経)はこの文言から始まっています。

どうしてこの文言から始まるのでしょうか。その理由を知るためには、まず、お経の成立について触れなければなりません。

如是我聞から経典がはじまる理由

お経の成立

お経の成立は今から約2500年前。お釈迦さんの滅後すぐに、約500人の僧侶が集まり、結集と呼ばれる経典の編集会議が行われました。

この時、十大弟子の一人であるマハーカッサパさんを議長とし、お釈迦さんの身の回りのお世話をしていたアーナンダさんが、最もお釈迦さんの話を多く聞いていたということで、経典の編集主任を担当しました。

しかし古代インドでは、まだ文字は常用されていません。そのため、その編集方法は現代とは大きく異なります。

まず、議長のマハーカッサパの質問に対し、アーナンダが「わたしはこのように聞いた(如是我聞)」と答えます。それはお釈迦さんの説法の内容や、その場の状況・経緯などを細かに答えたものでした。

集まった僧侶はそれが本当に正しいかどうか、お互いの記憶を確認しながら検討しました。合議の上それが認められると、全員で声をそろえてとなえ、暗記しました。

こうしてまるで「糸」を紡ぐかのように、お釈迦さんにまつわるエピソードが紡ぎだされ、「経」としてまとめられました。

その後、お経は約数百年間、文字を使わず口頭だけによる記憶暗唱で受け継がれていきました。

以上のことから解るように、お経とは元来、弟子達がお釈迦さんから聞いた話を集めたものなのです。

仏教エピソード附録「お経について」より抜粋~

以上がお経の成り立ちです。実はこれらの出来事についても、古いお経に記されています。

お経の編集の長として、アーナンダさんがその役目を担いました。その際に、「このようにわたしはきいた(如是我聞)」と言ってから、お釈迦さんにまつわる話を始めました。

それ以後、経典の文言が、如是我聞から始まるようになったと言われています。

如我是問の我って誰の事?

上記の事からも推測できるように、一般的に、この如我是聞の「わたし(我)」というのは、お釈迦さんのお世話をする役目(侍者じしゃ)をし、お釈迦さんが教えを説くのをずっとその傍らで聞いていた、アーナンダさんの事だと理解されています。

ただし、このように、如我是聞から経典が始まる形式は、大乗経典と呼ばれる経典でも受け継がれているため、如我是聞の「わたし(我)」が必ずしもアーナンダさんを指すとは言えません。

現在、お経は文字に起こされて伝えられています。私達日本人が一般的に目にするお経のほとんどが大乗経典と呼ばれるものです。

仏教には大きく分けて二つの流れがあります。スリランカやタイなどの東南アジアに伝わった上座部仏教、そして中国や日本など東アジアに伝わった大乗仏教です。

お釈迦さん入滅のおよそ百年後には、仏教教団は分裂し、紀元前後ぐらいには大きく分けてこの二つの流れができました。

上座部仏教では、現存する中で最も古いニカーヤと呼ばれる経典のみ、 お経として認めています。

しかし一方、大乗仏教では、新しい経典が次々と生み出されました。それらは大乗経典と呼ばれ、その数は膨大なものとなりました。

仏教エピソード附録「お経について」より抜粋~

また、結集においても五百人の弟子達が集まり、経典の編集会議を行いました。集まった僧侶はそれが本当に正しいかどうか、お互いの記憶を確認しながら検討しました。

きっとその編集会議の中では「わたしもそのようにきいた!」「確かにそうのようにわたしもきいた」という声もあったのであろうと考えられます。まぁ、これは私の個人的な推察でしかありませんが。

また、お経は約数百年間、文字を使わず口頭だけによる記憶暗唱で受け継がれてきたわけですから、人から人へ、バトンを受け継ぐように伝わっていきました。

バトンを渡す人、伝える人が「このようにわたしはきいた(如我是問)」という文句から始めるのも、当然といえば当然でしょう。

以上、大乗仏典や結集に関する推察、口伝による継承の事を含めて、如我是聞の「わたし(我)」は「弟子達」のことを指すと、私自身は説明しています。

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