今回は仏教トークや仏教エピソードを書く際にお世話になっているサイトと本についてご紹介します。これら二つのコンテンツは、古いお経を自分なりに翻訳して、サイトにアップしています。
しかし、私のような一僧侶がこれだけの数の経典を目にすることができるなんて、ほんのひと昔前までは考えられないことでした。
印刷やネットの発展のおかげで、これら貴重な資料を手軽に読むことができるようになりました。そんな時代にに生まれて非常にありがたいと感じています。
それもこれも過去から現代に欠けてずっと伝えてくれた人々(縦のつながり)や印刷やネットの技術、それにその技術を使って過去の貴重な資料をこうして公開してくださっている人達(横のつながり)のおかげです。
SAT大正新脩大藏經テキストデータベース
SAT大正新脩大藏經テキストデータベースは、大正大蔵経という膨大な量のお経をデータベース化してネット上に公開されています。
大蔵経とは?
簡単に言うと「全てのお経」ということです。
お経と言っても仏教のお経は一つではありません。長い歴史の中でたくさんのお経が書かれてきました。
その仏教経典の総称を大蔵経と言い、また一切経とも言われます。
元は中国で経・律・論の三蔵を中心に、中国で成立したお経(文献)を加えたものを大蔵経と呼んでいました。
ただ、お経とは元来、弟子達がお釈迦さんから聞いた話を集めたものです。
お釈迦さん入滅のおよそ百年後には、仏教教団は分裂し、紀元前後ぐらいには大きく分けて二つの流れができました。
上座部仏教では、現存する中で最も古いニカーヤと呼ばれる経典のみ、お経として認めています。しかし一方、大乗仏教では、新しい経典が次々と生み出されました。それらは大乗経典と呼ばれ、その数は膨大なものとなりました。
これら経蔵(お経)以外にも、僧侶の生活規則や規範を記した律蔵、仏教の教義に対する解釈や解説を記した論蔵といった分類があり、それを三蔵と呼んでいました。
西遊記でお馴染みの三蔵法師とは、元来、この経・律・論の三蔵に精通している僧のことを指します。
西遊記で三蔵法師と言えば玄奘三蔵と言われますが、玄奘さんもインドから中国へたくさんの経典を伝えた大翻訳家で、文字通り三蔵に精通した三蔵法師です。しかし、三蔵法師はその他にもたくさんいます。
経・律・論の三蔵は後に、たくさんの僧の手によって、インドから中国に伝えられ、次第にこの三蔵全体をお経と呼ぶようになりました。そしてそれは大蔵経や一切経としてまとめられたというわけです。
中国でまとめらた漢訳大蔵経は初期仏教~大乗仏教に至るすべての経・律・論を含み、中国で成立したお経(文献)を加え編纂され、日本にも伝わりました。
これらの漢訳大蔵経に基づいて日本でも日本で成立したお経や宗典(文献)を加え編纂され続け、大正時代(1924年)に「大正新脩大藏經」として刊行されました。
そして現在「大正新脩大藏經」はデータベース化され、WEBに公開されています。
国訳一切経 印度撰述部1 阿含部1~10
国訳一切経は上記の大蔵経を和文に書き下したものです。インド撰述部は1930年〜1936年にかけて初めて刊行されました。
漢文だけでは時間がかかりますが、和訳されたものを参考にできるので、非常に助かっています。
こうして誰かの一つ一つの積み重ねにより、お経が今日の自分の下に届いているのを考えると、大変ありがたく感じます。
このように、お経は約2500年前から次々と編纂されて伝わっています。編纂されているということは、翻訳などを通して、その時代、その場所に意味が伝わるように努力を重ねられてきた過程でもあるということです。
約2500年間、人類が積み重ねてきた書、それが経典です。そしてそれを現在も様々な人が翻訳したり、自分の言葉に噛み砕いて伝えてくれています。
私もその一員になれるよう、私なりにこれら経典の言葉を消化して伝えていく努力を続けていきたいと思います。
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