豪華な服装を好んだ弟子ナンダの成長

豪華な服装を好んだ弟子ナンダの成長

本記事は「雑阿含経巻第38-1067」の内容をもとに作りました。

弟子ナンダは、お釈迦さまのいとこであり、王族の家に生まれたこともあって、身なりにはとても気を使う人物でした。豪華な服を好み、周囲の注目を集めることも少なくありません。

雑阿含経巻に記されたこの物語では、ナンダの服装や身分に対するこだわりが描かれ、弟子たちやお釈迦さまとのやり取りを通して、その在り方について考えるきっかけが示されています。

ナンダの出自と服装の豪華さ

弟子1
弟子1

ナンダさんって、お釈迦さんのいとこなんだよね?

弟子2
弟子2

そうだね。

弟子1
弟子1

じゃあ、ナンダさんも王族出身ってことだよね?

弟子2
弟子2

そうだね。服装一つ見てもよくわかるじゃないか。

弟子1
弟子1

服装? なんで?

弟子2
弟子2

私は、先日、ナンダさんと直接会ったのだけど、なんというか……、かなり豪華な服を着ていたから。

弟子1
弟子1

へぇ~。

ナンダ
ナンダ

皆さん。こんにちは。

弟子2
弟子2

こんにちは。ナンダさん。

弟子1
弟子1

(本当だ!)かなりオシャレな恰好していますね。

ナンダ本人の説明

ナンダ
ナンダ

おや、わかりますか? いいでしょう。これ。

弟子1
弟子1

その衣、生地がツヤツヤですね。

ナンダ
ナンダ

そうなんですよ。ツヤを出すために、職人が裏返してたたいて、ツヤを出しているんですよ。

ナンダ
ナンダ

この縫い目も、細部まできちんと染めてあるでしょう? 職人が手作業で丁寧につくってくれた一品です。

弟子2
弟子2

そうなんですか……。

弟子1
弟子1

ファッションのことあまりわからないのですが、聞いた感じ、すごい一品だということは伝わってきます。

ナンダ
ナンダ

君はあまりファッションというものがわかっていないようですね。センスが良い物をそろえていると、やはり目を惹きますから。周りの反応も違いますし。

ナンダ
ナンダ

品位のある服を選んで笑顔で接すると、皆さん、喜んでくださいます。結果として、寄付の量も増えています。おいしい食べ物も頂けますよ。

弟子2
弟子2

えーっと……

ナンダ
ナンダ

それは我々にとっても良いことでしょう?

弟子2
弟子2

どうなのでしょうか……。

周囲の反応と疑問

別の日、ナンダさんと話して弟子達は、ナンダさんの発言について、お釈迦さんに意見を求めました。

弟子1
弟子1

……と、いう事がありまして。

弟子2
弟子2

私はナンダさんの言っている事が、師匠の教えに沿っているのかどうか、気になったのです。

お釈迦さん
お釈迦さん

ふむ……。すみませんが、ナンダさんを私の所へ連れてきてもらってもいいでしょうか?

弟子2
弟子2

かしこまりました。


呼び出しに応じて、ナンダさんは、お釈迦さんの所へやってきました。

お釈迦さん
お釈迦さん

ナンダさん、あなたは豪華な服を着て、オシャレにも敏感だと聞きました。

ナンダ
ナンダ

はい。おっしゃる通り、私は服装には気を使っております。

お釈迦さん
お釈迦さん

聴衆が喜ぶ服をあえて選び、好んで流行の服を選び、彼らに笑顔を振りまいている。そう聞きましたが……。

ナンダ
ナンダ

はい。その方が、支援や寄付も増えますし、我々にとって良い事でしょう。

お釈迦さん
お釈迦さん

私達は、もう王族の時とは違うのです。着飾ることで権力や地位を誇示する必要はありません。

ナンダ
ナンダ

しかし、我々は釈迦族の生まれ。王族の品位を貶めるような事があってはならないでしょう。

お釈迦さん
お釈迦さん

我々は、もう家を出て、身分は関係ないのですよ。

ナンダ
ナンダ

たとえそうだったとして、衣服によって品位を示すのは有効な手段です。それに私はあなたのいとこ、つまり仏陀のいとこなのですから。それこそ品位は必要でしょう。その品位を示すのが服装なのだと思います。

お釈迦さん
お釈迦さん

あなたが私のいとこであることは事実です。そしてまた、家を出て身分を捨てたのも事実です。地位も名誉も何も持たない所から、自己を見つめてください。

ナンダ
ナンダ

自己を見つめる? 具体的にどうすればいいのですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

その為にもまず、乞食こつじきし、糞掃衣ふんぞうえをつけてください。

ナンダ
ナンダ

こつじき? ふんぞうえ?

お釈迦さん
お釈迦さん

貧富の差に関係なく、家々を訪ねなさい。そしてこの器の中に食事を頂きなさい。それが乞食こつじきです。

ナンダ
ナンダ

この器の分だけですか? 今までの私ならもっと寄付をもらえましたよ。もっと良い食事も頂けました。それに貧しい家に行っても、彼らはほとんど物を持っていないのですから、そんなに量はもらえませんよ。

ナンダ
ナンダ

もっとお金や地位がある所に行った方がいいですよ。地位や財産がある人は、服装にもこだわっている方が多いです。だからこそ、私も品位のある服を選んでいるのですよ。

お釈迦さん
お釈迦さん

なりません。貧富の差に関係なく、同じように家々をまわりなさい。地位や財産は関係ありません。その真意がわかっていないからこそ、あなたは糞掃衣を身に着けるべきなのです。

ナンダ
ナンダ

その糞掃衣とは何ですか?

お釈迦さん
お釈迦さん

他の人が不要となって捨てた生地から、使える部分だけを切り取って、自分の身体を覆えるぐらいの一枚の布を作りなさい。それが糞掃衣です。

ナンダ
ナンダ

師がそういうのであれば……、私はその通りに致します。

この出来事を機に、ナンダさんは、品位や品格、流行を意識することもなくなり、彼の行動は変わっていきました。自らの欲望を顧みる良いきっかけとなったようでした。

後にお釈迦さんは、この話を振り返って、こんな詩をよみました。

お釈迦さん
お釈迦さん

どうすれば見ることができようか。ナンダが苦行を楽しむことを。そうだ、私は見ていられなかった。

 

今、ナンダは、深く静かな林のように、落ち着き坐り、乞食を行う。

 

山林しずかに、心静めて思慮するように、ナンダは欲を捨て、落ち着きの中に坐っている。

補足

原文

  • 雑阿含経巻第38-1067

(一〇六七)如是我聞。一時佛住舍衞國祇樹給孤獨園。爾時尊者難陀。是佛姨母子。好著好衣染色。擣治光澤執持好鉢。好作嬉戲調笑而行。時有衆多比丘。來詣佛所。稽首佛足退坐一面。白佛言。世尊。尊者難陀是佛姨母子。好著好衣。擣治光澤執持好鉢。好作嬉戲調笑而行。爾時世尊告一比丘。汝往詣難陀比丘所語言。難陀大師語汝。時彼比丘受世尊教。往語難陀言。世尊語汝。難陀聞已即詣佛所。稽首佛足退住一面。佛告難陀。汝實好著好衣。擣治光澤。好作嬉戲調笑而行不。難陀白佛。實爾世尊。佛告難陀。汝佛姨母子。貴姓出家。不應著好衣服擣令光澤執持好鉢好作嬉戲調笑而行。汝應作是念。我是佛姨母子。貴姓出家。應作阿練若乞食。著糞掃衣。常應讃歎著糞掃衣。常處山澤不顧五欲。爾時難陀受佛教已。修阿蘭若行乞食。著糞掃衣。亦常讃歎著糞掃衣者。樂處山澤不顧愛欲。爾時世尊即説偈言 難陀何見汝 修習阿蘭若 家家行乞食 身著糞掃衣 樂處於山澤 不顧於五欲佛説此經已。尊者難陀聞佛所説。歡喜奉行
(T0099_.02.0277a10-b05)

SAT大正新脩大藏經テキストデータベースより

  • 国訳一切経阿含部3巻74頁

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