
——その言葉は、どこまでも正しく聞こえました。
「王様になってほしい」 ──純粋な願いが悪魔のささやきになるとき

お釈迦様は王族の出身なんだよね?

はい。

なんでお釈迦様は、王様になろうと思わないの?

えっ?

うん。お釈迦様ほど聡明な人なら、きっと立派な王になるよ。

いや、私は・・・・・・。

なんで? お釈迦様は人を殺したり、殺させたりせずに、きちんとルールを守り、守らせる、良い王様になれるんじゃない?

民を殺さず、法を作り、国全体でその法を遵守する。
そんな国があれば、まさに理想の国家。
そんな国を作ることを夢見た事がないかと言われれば、嘘になってしまいますが・・・・・・。

お釈迦様なら王になって、皆が法を遵守する。
そんな理想の国家を作れるよ。
是非、王様になってください。
必ず、お釈迦様が夢見た通りの国ができます。

少年。あなたの言葉は、まるで悪魔のささやきのようですね。

なんで? 僕、悪魔じゃないよ?
言っていることは、夢のような国のことでしょう?
ねぇ。王様になってよ、お釈迦様!
お願い、王様になってよ!
雪山ほどの黄金があっても ──本物の金ピカと、決して満たされない欲望

なぜ、あなたは王になれ、王になれと、私にせがむのですか?

だって、今野世の中なんて、誰も僕を救ってくれない。
おなかがすいても、夜に外で凍えていようと、誰も何も、僕を救ってくれない。

それは・・・・・・。

僕、お釈迦様の話を聞いたことあるよ。
きちんと修行して、きちんとした人になるんだよね。
そんなきちんとした人中の人であるお釈迦様が王様になったら、きちんとした王様になれると思うんだ。

ただ金ピカに着飾っている偽物なんかじゃなくて、本物の王様に、本物の金ピカの王様に・・・・・・。
だからお釈迦様に王様になってほしいと思うんだ。

わたしは、これっぽっちも、王様になろうとは思っていません。
ましてや君のいうような金にも等しい王様になろうなんて思っていません。

なんで?
本物の金ピカがあったら、それはすごいことだと思うんだ。
何億、何兆円もするほど、すごく高価なものだと思うんだ。
だから、そのお金で僕たちもひもじい思いなんてしなくて済むと思う。

残念ですけど、君の言う金ピカは、金ピカだけど、お金には換えられないものなんです。
それにね、仮にその金ピカを誰かが手に入れて、お金に換えられたとしても、それをお金に換えてしまったら、他の皆も、そのお金が欲しくなっちゃうでしょう。

そうだね。僕はそのお金で、おなかいっぱい食べたい。
その為に、金ピカを分けてほしいんだ。

それでは、一人、二人、三人と・・・・・・皆が欲しがって、きっと足りなくなってしまいます。
そんなものは金ピカとは言わないんですよ。
智慧ある人は、本当の金ピカと金ピカじゃなくなってしまう偽物の意思を同じにはしないんです。
補足
原文や動画、仏教用語の説明や関連する仏教知識など、補足として参照できます。
原文
- 雑阿含経巻第39-1098
(一〇九八)如是我聞。一時佛住釋氏石主釋氏聚落。爾時世尊獨一靜處。禪思思惟作是念。頗有作王能得不殺。不教人殺。一向行法。不行非法耶。時魔波旬作是念。今沙門瞿曇住石主釋氏聚落。獨一禪思作是念。頗有作王不殺生。不教人殺。一向行法。不行非法耶。我今當往爲其説法。化作年少往住佛前。作是言。如是世尊。如是善逝。可得作王不殺生。不教人殺。一向行法。不行非法。世尊今可作王。善逝今可作王。必得如意。爾時世尊作是念。惡魔波旬欲作嬈亂。而告魔言。汝魔波旬。何故作是言。作王世尊。作王善逝。可得如意。魔白佛言。我面從佛聞作是説。若四如意足修習多修習已。欲令雪山王變爲眞金。即作不異。世尊今有四如意足修習多修習。令雪山王變爲眞金。如意不異。是故我白世尊。作王世尊。作王善逝。可得如意。佛告波旬。我都無心欲作國王。云何當作。我亦無心欲令雪山王變爲眞金。何由而變。爾時世尊即説偈言 *正使有眞金 如雪山王者 一人得此金 亦復不知足 是故智慧者 金石同一觀時魔波旬作是念。沙門瞿曇已知我心。内懷憂慼即沒不現
(大正No.99, 2巻288頁c段11行 – 289頁a段7行)
- 国訳一切経阿含部3巻112頁


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